塾生日記『食べられそうなものを求めて山へ』れい


僕は山に入ると帰りどころがわからなくなる。先に進めそうなら後先考えずにどんどん行ってしまう。地籍調査の杭を見つけると、なおのこと奥の方へ行ってみたくなる。いずれえらい目に逢いそうなので、いい加減に悪癖を直さなければならない。一応、降りる方向を示す目印が見える範囲を移動しているが、迷うと怖いので、片道一時間ということにはしている。

今回は食べられそうなものを求めて山に入ったのだが、奥に行くことに夢中になり、のぼってきたルートがわからなってしまい、とにかく海が見える方に降りていった。途中崖が続いて海の方へ降りられなくなり焦ったが、とりあえず迂回してでも下の方へ下りられるルートを歩いていった。すると、グイだらけだが人工の道らしきものに突き当たり、その道に沿っていくと突然杉林が見えたので安心した。程なく貯水池が見えてくる。貯水池が二段になっており池と池の間は沢になっていて、水が絶えず流れている。最近イノシシが多いが、彼らは水をこのような所で飲んでいるのだろうか、などと思いながら沢の対岸に目をやると、真っ黒いイノシシがこちらに背を向けて走り去っていった。対岸で助かった。地続きであったなら危険だった。

道も開けてきて集落も視界に入るようになり、道路に出たのだが、なぜか帰ってきた気がしない。山をうろうろしている時は、どうやったら上に登れるか、反り返った木が跳ね返ってこないか、足元は崩れないか、茨のトゲが目に入ったりしないか、そんなことに終始気を使いながら歩いているので、急に見知った所にでると途方にくれてしまう。空間認識で使っている脳の部分が違うのだろうか。

肝心の食べられそうなものは、僕の乏しい知識ではゼンマイぐらいのものしかわからなかった。今回見つけたのは小さいザクロのようなもの、ゼンマイ、なにかの実が炭化したようなもの。

小さいザクロは、ドライフルーツ状になっていて食べるとやはりザクロの様な味がした。ゼンマイは山がシダだらけだったので、この先の季節、たくさん採ってこれそうだ。
そしてこの黒い物体はなんだろうか。なんとなく、アケビのような気もするが、普通アケビの実なら今頃腐って跡形もないはずだ。カッターで硬い表皮を切り開いてみると、やはりアケビっぽい。「木戸さんは実が開かずに乾燥して腐らなかったのでは?」と言っていた。色々と想像してしまう。このアケビの実は全体からみれば欠陥があるが、大規模な環境変化などでアケビの従来のサイクルが崩れた時、このような実が長きに渡って保存され、再びアケビが生育できる環境が戻った時に地面に種を降ろすのではないか。

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